先日、小さな女の子のお髪を切らせていただいた。
「髪切ろう!」
そう彼女のお母さんが口にした途端、仏頂面になってしまった。
あらら。
短いのが嫌なのね。
このくらいの歳の子にはよくあること。
気分を盛り上げようと手を繋いでセット面へご案内する。
その手は力なく、明らかに嫌がってる感じ。
お母さんが任せてくださったので
オーダーどおりに切るために彼女にも確認する。
でも言わない。
やりにく~い空気が流れだしたので
お母さんの言葉を繰り返した私。最後に付加えた選択を促す言葉
「髪が長くてからまってぼさぼさの私と
少し短くなって可愛い私と、どっちがいい?」
可愛いほうがいいに決まってる。
切ってる間、他愛ない会話で彼女と心を揃えていくように。
そして切り終わって鏡を見てもらう。
笑わない。
お母さんは満足。
またお願いしますね。
親御さんからこの言葉をいただくときはいつもほっとする。
カットの具合もなかなかな仕上がり。
でも今日の私は心に何かが引っかかっている。
翌日、定期的に受けているコーチングの日。
彼女の髪は短くなったけれど、本当の笑顔がないまま。
何か大切なものまで切りきざんでしまったのではないかという不安。
あの人だったら彼女を笑顔に出来るのに。
そんな尊敬するあの人になったつもりで
椅子に座ってカットしてる私を見つめる。
そうか。
私は女の子の気持ちに寄り添いたかったんだ。
なのにドカドカと踏み込んでしまったことを後悔している。
あーこれって私がふてくされる時と似てる。
気付いて欲しい、寄り添って欲しいと思いながら、
大切なことは表現せず、察してよと思う。
挙句の果てに寄り添ってくれる人には踏み込まないでと。
でも今私が相手にしているのは小さな子だ。
切るのが嫌な気持ちをうまく言えるわけがない。
そこを汲んで、髪を調えるのが私の仕事なのだ。
職業柄、美人はたくさん見てきている。
私が切ったスタイルが笑顔一つで私の元を離れ
その人のものになってしまう瞬間も幾度となく見てきた。
顔の美醜ではないところに明らかに存在する美人の法則。
それはあの女の子も感じられるはず。
どんなふうに言葉をかけて寄り添うか
美容学校でもサロンの営業でも教わらないことを
マニュアルにさえないことを
自分の中から導き出せた喜び。
寄り添う力は偉大だと思う。
今度の時には、きっと大丈夫。