先日お支度させていただいた新成人さま。心暖まるエピソードをご紹介します。
「亡き姉の着物が出てきたの」というところから始まった今回の着付けでした。
人伝にご紹介いただき、私のところに持ち込まれたこの思い出深いお着物。
大好きな伯母さまの着物で、お婆様が作られたとのことで。袖が短いのはもはや、着ない理由にはなりませんね。
編み物をされるお母さんが、ショールにしようかどうしようかと、考えに考えて編んだのは手首カバーでした。おかげで、手元が優しく馴染みました。
50年前の着物ということで、今なお美しいことに居合わせた皆んなで感心したけれど、本当の価値は50年っていうだけじゃないんです。
着物が出来上がるまでのお婆様お爺様のヒストリーがぎゅぎゅっと詰まっていて、それを「着たい」と思う新成人さんがいて。
八ヶ岳に移住数年目のご両親が、まだまだ土地勘もない中、着付けに必要な一式、撮影、撮影会場、もろもろを整えられる様子は文字通り「八ヶ岳マジック」そのものでした。
八ヶ岳での移住暮らしって、何とも言えずしんどくて大変なときがたまにやってくる。
強く吹きつける冷たい八ヶ岳おろしに、心まで枯れてしまいそうな日もあったりなんかして。
それでも私たちがこうして、持てるものを持ち寄って何かを創りあげることができるのは、子どもたちの育ちが希望だから。
成人式は、一族が愛し愛されていた記憶を思い出す、大事なセレモニー。
血が喜ぶってそういうことなんじゃないのかな。
今回の成人式に際し、いろんな方からメッセージを貰いました。礼装着付け師として、これからも精進して参ります。
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